10歳以上のワンちゃん
この時期のワンちゃんは人でいうと60代以上になります。ワンちゃんの世界ではシニア期に入ります。
この時期に気をつけていただきたいのは、「病気の早期発見・治療」です。この時期になると、少なからず病気が出てきます。早期に発見することで上手に病気と付き合っていくことができたり、重症になることを防ぐことができることがあります。
もう少し早く来てくれたら助かったのに・・・」と思う子もたくさんいます。
ワンちゃんとの楽しい生活を長く続けるためには、飼主様のご協力が不可欠となります。この時期なりの付き合い方を是非知ってあげてください。
●この時期に気をつけたいこと
下記の項目を行うことで、「病気の早期発見・治療」を行いましょう。
また、この時期から病気が見つかりやすくなりますので、少しでも「おかしいな?」と思ったらお早めに病院へお越しください。
- 基本的な予防の継続
- 年間2回の健康診断
- この時期になりやすい病気について知っていただくこと
- 介護について知っていただくこと
シニアのワンちゃん用チェックリスト
上記のチェックリストが1つでも当てはまる・気になることがある場合は診察時にお尋ね下さい。
健康な状態でも、年に1回は定期健診を受けましょう。
日頃から気をつけていただきたいこと
シニア期になっても元気に過ごすためには、日常的な予防や対策を行いましょう。
■デンタルケア
この年齢のワンちゃん達には、歯石の付着がよく見られます。特に、これまで何もしてこなかった・・・という場合は要注意です。年齢によっては、処置によって歯石を取ることが難しい場合もあります。歯石による歯周病は心臓の病気などの原因になることも分かっていますので、しっかりとデンタルケアを行いましょう。
■心臓の病気の予防
心臓病は知らないうちに悪化していきます。
定期的に聴診をすることが早期発見のためにとても大切になります。
息をする様子がおかしい、咳が出るようになった、などの症状があれば、要注意です。
■肥満の防止
日頃から体をよく見て、よく触って異常が無いかチェックしましょう。
体の表面にしこりが無いかをチェックすることも重要です。
お腹が大きくなってきたなどの変化が出ることもありますので、気になることがあればお早めにご相談ください。
年間予防スケジュール
フィラリア予防血液検査&フィラリア予防薬 | 3月~12月 |
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ノミダニ予防 | 1月~12月 |
狂犬病予防接種 | 年1回 |
健康診断 | 年1回(2回) |
歯石チェック&混合ワクチン接種 | 年1回 |
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フィラリア予防
フィラリア症は蚊に刺されることによって感染する病気で、ひものような寄生虫が心臓や肺動脈の中に寄生します。
予防・治療を行わないと命を落とすこともある病気です。月に1回の飲み薬や半年に1回の注射でしっかりと予防できます。
※ 毎年フィラリア予防の前には、必ず検査が必要です。 -
ノミ・ダニ予防
ワンちゃんにノミ・ダニが感染すると、皮膚炎を起こしたり、伝染病を媒介することがあります。家庭内でノミのライフサイクルが成立してしまうと、完全に駆除するのはとても大変です。
人がノミをおうちに持ち込んでしまうケースもあるので、屋外に出ないワンちゃんもしっかり予防してあげることが大切です。
現在、いろいろなノミ・ダニの駆虫薬がありますが、お薬の成分や駆除効果、持続効果は同じではありません。
おうちの子にあったお薬や投与方法のアドバイスも致しますのでご相談ください。 -
狂犬病予防接種
狂犬病の予防注射は狂犬病予防法という法律で接種が義務付けられています。
当院でも狂犬病の予防接種をすることができます。
市区町村から届くハガキを持ってご来院ください。
(初年度登録がおすみでない場合はハガキは必要ありません) -
ワクチン接種
混合ワクチンでは以下の感染症の予防が可能です。
ワクチンを接種する前に健康診断を行いますので、定期的に体重や健康状態をチェックして記録できるいい機会でもあります。
毎年1回の接種をしてあげてください。予防できる病気 5種ワクチン 6種ワクチン 8種ワクチン 犬ジステンパー ◎ ◎ ◎ 犬アデノウイルス2型感染症 ◎ ◎ ◎ 犬伝染性肝炎 ◎ ◎ ◎ 犬パラインフルエンザ ◎ ◎ ◎ 犬パルボウイルス感染症 ◎ ◎ ◎ 犬コロナウイルス感染症 ◎ ◎ 犬レプトスピラ感染症 黄疸出血型 ◎ 犬レプトスピラ感染症 カニコーラ型 ◎ -
健康診断
シニア期は病気の早期発見が重要な年齢ですので、年間2回以上の健康診断を行いましょう。シニア期に特有の病気も多くあります。それらの多くは健康診断を受診していただくことで早期に発見できることがあります。
日頃のワンちゃんの様子や心配な症状から各種検査を組み合わせて行うことができます。体の中の腫瘍など外から見てもわからない病気の早期発見には画像診断がおすすめです。お気軽にご相談ください。
→わんにゃんドックのページ- 血液検査
- 糞便検査
- 尿検査
- レントゲン検査
- 超音波検査など
シニアのワンちゃんに多い病気
◎生殖器の病気(子宮蓄膿症:女の子)
細菌感染などで子宮の中に、膿が溜まる病気です。避妊手術をしていない6歳以上のワンちゃんに多く見られます。ホルモンバランスの乱れや、高齢に伴う免疫の低下で細菌に感染するリスクが高くなるといわれています。
◎生殖器の病気(前立腺肥大:男の子)
オス犬の膀胱の後方で尿道を囲むように存在する前立腺が徐々に肥大してくるのが前立腺肥大です。進行すると、排便・排尿障害や細菌感染を伴う前立腺膿瘍を引き起こすこともあります。
◎肛門の病気(会陰ヘルニアなど)
去勢手術をしていないオスがかかりやすくなります。高齢になり、おしりの周りの筋肉が緩んできたためにできた穴(ヘルニア孔)から腸や膀胱が脱出し、排便・排尿障害を起こします。
◎腫瘍(乳腺腫瘍、リンパ腫など)
腫瘍は癌や肉腫とも呼ばれ、高齢になると発生しやすくなります。
乳腺腫瘍はメスに最も多く発生する乳腺にできる腫瘍です。特に避妊をしていないメスでの発生率が高い傾向にあります。その他にも人間と同様、様々なところに腫瘍が発生します。
◎心臓の病気(僧帽弁閉鎖不全症など)
僧帽弁とは、心臓の左心房と左心室の間に存在する弁で血液が逆流しないようにする重要な役割を果たしています。この弁が異常をきたし心不全による咳・運動不良・湿疹・肺水腫などの症状が出ます。
◎関節の病気(変形性関節症など)
主に、中高齢期の股関節・肘・膝・肩に良く見られ、関節の軟骨組織がすりへったり、破壊されたりすることにより、様々な部位に発生して関節の動きが悪くなったり慢性的な痛みを伴います。
◎お口の病気(歯周病など)
歯と歯ぐきの間に入り込んで増殖した細菌によって歯ぐきが炎症を起こし、歯を支える部分が破壊されていく病気です。歯に溜まった歯垢や歯石が主な原因となります。
上記の病気は一例です。また、病気を予防するためにも日頃のケアに注意しましょう。